漆器 浅井康宏 蒔絵玳瑁宝石箱「光の道」
日本の漆芸家、浅井康宏 (アサイ ヤスヒロ) による、宝石箱です。
光の具象化をテーマにした作品です。
光はすべての生命の源であり、1点の光源から発せられるエネルギーと、多角の箱形状の中に現代のスピード感を表現しています。
この作品は2012年に制作され、2012年、第59回日本伝統工芸展で「新人賞」を受賞しました。
素材は、金、漆、玳瑁、夜光貝、玉虫貝を用いています。
金属板の打ち抜きと夜光貝を用いた幾何学模様を中心に、大胆な片身替わりで意匠しています。
漆芸の技法としては、下記のものを取り入れています。
蒔絵
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蒔絵は日本独自に発達した漆芸の代表的な技法で1200年ほど前から行われています。器の表面に細い筆を使って漆で絵を描き、その漆が固まらないうちに上から金の粉を蒔きつけて模様をあらわします。蒔いて絵にするという意味から蒔絵といいます。研出蒔絵、平蒔絵、高蒔絵などのつくりかたがあります。
平文
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金や銀などの金属を、薄い板にのばしてからいろいろな形に切りぬいて模様をつける技法です。
螺鈿
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螺鈿はアワビや夜光貝、白蝶貝などの貝がらの輝いた部分をうすくして使います。「螺」は巻き貝をさし、「鈿」にはかざるという意味があります。
螺鈿は、1300年ほど前に中国大陸から伝わった技法で正倉院の宝物にも見ることができます。
浅井康宏は、1983年生まれの若手の漆芸家です。日本工芸会正会員。
漆芸の重要無形文化財保持者(人間国宝)室瀬和美に師事。
蒔絵、螺鈿、玳瑁など複数の加飾技法を駆使した表現を得意としています。
漆器は、漆塗りを施した器物です。
日本を始め、中国、朝鮮、タイなど、漆を産出する国で発達した東洋独特の工芸です。
高級品は美術工芸品となりますが、普通品は実用品として使われます。
製法は木材、竹、紙、布、皮、合成樹脂などを用いて作った素地 (きじ) に漆を塗りますが、高級品ほど漆塗りの回数は多くなり、制作にも多くの工程・期間が必要となります。
英語で、磁器をchinaと呼ぶのに対して、漆器はjapanと呼ばれ、欧米では日本の特産品・工芸品と考えられています。
繊細で熟練を要す技法を駆使して手作業で丹念に制作される高級漆器は、芸術的価値も高く、日本を代表する高級工芸品として広く知られています。
[出典]ギャラリージャパン