漆器 浅井康宏 蒔絵螺鈿華形盤
日本の漆芸家、浅井康宏 (アサイ ヤスヒロ) による、作品です。
美しく繊細で高貴な蒔絵の装飾が施された、盤。
器として色々な用途で利用出来ます。
浅井康宏は、1983年生まれの若手作家です。
この作品は2014年の制作。
6弁の内側に切金で模様をつけ内側に12弁の花模様を現しています。作品の造形も、脚から伸びる茎と花をイメージして制作しています。
和風ですが、仏教・仏具的で神秘的・高尚な印象の造形です。
盤上面の金色の装飾の内側に拡散された青色の点の広がりが、宇宙的であり、宗教的美学を感じさせます。
丈夫な麻布と漆で形を作り、金粉、金板、螺鈿、玳瑁を用いて表現されています。盤の上面は乾漆で制作し、脚の部分は欅の挽き物で構成されています。
漆芸の技法も多彩に取り入れており、下記の技法を駆使しています。
蒔絵
蒔絵は日本独自に発達した漆芸の代表的な技法で1200年ほど前から行われています。器の表面に細い筆を使って漆で絵を描き、その漆が固まらないうちに上から金の粉を蒔きつけて模様をあらわします。蒔いて絵にするという意味から蒔絵といいます。研出蒔絵、平蒔絵、高蒔絵などのつくりかたがあります。
乾漆
粘土で形をつくり、その形を石こうで型にします。型に麻布を必要とする厚さに漆で貼り重ねて、型からはずして形をつくります。その後、さらに漆を塗って仕上げます。麻の繊維は漆がしみこむと強くなるので、丈夫で自由な形をつくるのに適しています。
螺鈿
螺鈿はアワビや夜光貝、白蝶貝などの貝がらの輝いた部分をうすくして使います。「螺」は巻き貝をさし、「鈿」にはかざるという意味があります。
螺鈿は、1300年ほど前に中国大陸から伝わった技法で正倉院の宝物にも見ることができます。
平文
金や銀などの金属を、薄い板にのばしてからいろいろな形に切りぬいて模様をつける技法です。
浅井康宏は、1983年生まれの若手の漆芸家です。日本工芸会正会員。
漆芸の重要無形文化財保持者(人間国宝)室瀬和美に師事。
蒔絵、螺鈿、玳瑁など複数の加飾技法を駆使した表現を得意としています。
漆器は、漆塗りを施した器物です。
日本を始め、中国、朝鮮、タイなど、漆を産出する国で発達した東洋独特の工芸です。
高級品は美術工芸品となりますが、普通品は実用品として使われます。
製法は木材、竹、紙、布、皮、合成樹脂などを用いて作った素地 (きじ) に漆を塗りますが、高級品ほど漆塗りの回数は多くなり、制作にも多くの工程・期間が必要となります。
英語で、磁器をchinaと呼ぶのに対して、漆器はjapanと呼ばれ、欧米では日本の特産品・工芸品と考えられています。
繊細で熟練を要す技法を駆使して手作業で丹念に制作される高級漆器は、芸術的価値も高く、日本を代表する高級工芸品として広く知られています。
[出典]ギャラリージャパン