ヴェネチアガラス アントニオ・ダ・ロス 花瓶 モーメント フェニキア
ヴェネチアガラス アントニオ・ダ・ロス 花瓶 モーメント フェニキア
( Venetian Glass Antonio Da Ros Vase “Momento-Fenicio” )
イタリアの伝統的なガラス工芸、ヴェネチアガラスの花瓶作品。
ガラスオブジェとしての存在感に溢れる作品です。
ヴェネチア、ムラノ島のガラスメーカー、ジーノ・セネディス&C ( Gino Cenedese&C ) にて、リリースされた花瓶で、ヴェネチアのガラスデザイナー、アントニオ・ダ・ロス ( Antonio Da Ros ) による作品。
1965年の制作です。
“Momento-Fenicio” – モーメント フェニキア (フェニキアの記念品)と名付けられた作品。
フェニキアは、古代の地中海東岸に位置した歴史的地域名ですが、そのフェニキア人が始祖とされるガラス技法が、フェニキアと呼ばれる吹きガラス技法。
ヴェネチアガラスは、吹きガラス技法を洗練させてきた歴史があり、その技法に対する敬意の意味もあるかも知れません。
美しい青色で櫛状に放射線のように着色された模様と、重厚感ある透明なクリスタルガラスとの組合せで、独特の存在感を放っています。
圧倒的な重量感と存在感を持ち、そのガラスのボリューム感から、独特の世界観と、そこに吸い込まれていくような空間の演出を創生しています。
クリスタルガラスの透明な層の上に、鮮やかな青色が、光彩のような美しさで浮遊しています。
本作品では、フェニキアの他、Sommerso(ソッメルソ)と呼ばれる技法が用いられています。
イタリア語で「水中に沈める」などの意味を持つSommerso(ソッメルソ)。
対照的な色の層が特徴でヴェネチア・ムラノガラスの技法として、古くから受け継がれています。
ヴェネチアガラス(VENEZIAN GLASS)
ヴェネチアガラスは、700年以上もの歴史と伝統を今に伝えています。もちろん、その名のとおり中心地がイタリアのヴェネチアであることは言うまでもありません。中世のヴェネチアは、世界貿易の中心となる過程で優れたイスラムのガラス芸術吸収することにより誕生しました。
ヴェネチアガラスを”ムラノガラス”とも呼びますが、ムラノとはヴェネチア本島から北東約1.5kmにある島で、ここでガラス製造が集中して行なわれていたため”ムラノガラス”とも呼ばれています。ここもあの有名なスワロフスキーと同じようにその製法の秘密を守るためにヴェネチア本土からこのムラノ島に工房を移転したのだといわれています。
ムラノ島で制作されるガラス芸術は15世紀には 高級工芸品として価値を持ち始め16世紀には、ヨーロッパ全土で広く受け入れられ、流行していきました。ヴェルサイユ宮殿の「鏡の間」は、12人のムラノのマエストロ(職人)がヴェネチアから連れ出されて製作したといわれています。
こうしてその名をヨーロッパ全土に広めたヴェネチアガラスは、主に貴族や富豪のために特別に注文されたテーブルウエアを製作するために、大きくそのスタイルを発展させました。 そして、アイスクラック、ダイヤモンドポイント彫り、レースガラス、クリスタルなど多彩なカットの技法が次々に生み出されました。近世では、ガラス文化をヨーロッパ全土に広め、一時はヨーロッパ市場の90%を占有するほど成長しました。
そして現在、熟練したマエストロ(名人)達は息子からそのまた息子へとこの技術を伝承し、昔と変わらぬ伝統の技を活かしながらヴェネチアガラスは創り続けられています。機械での大量生産では出せない本物の味わいがそこにあります。
[出典]TILLIPAN: Venetian Art Glass