漆器 山岸一男 沈黒象嵌合子 「能登残照」
集中力と緊張感。そこから生み出された繊細で鋭利な装飾と意匠。
漆芸家、「山岸一男 ( ヤマギシ カズオ ) 」による、合子です。
合子は、蓋付きの小さい容器の事を指します。身と蓋とが合う物の意味があります。
山岸一男は、輪島出身の漆芸家。
2018年に、「沈金」の技法で、国指定重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。
「沈金 (ちんきん) 」は、漆芸の代表的な技法の一つ。
塗り上がった漆面に、のみや刀と呼ばれる刃物で模様を線や点で彫ります。彫ったみぞに金箔や細かい金粉を刷り込み、細くて繊細な模様を表現します。600年ほど前に中国大陸から伝わった技法です。
点や線で彫った部分に金箔や金粉を入れると、金色の強くかがやく模様になります。金の代わりに銀を入れると沈銀、朱の色を入れると沈朱といいます。
この、沈黒象嵌合子 「能登残照」は、平成28年 第63回日本伝統工芸展において、NHK会長賞を受賞した作品。
沈金を更に掘り下げ、漆器に彫った溝に伝統的な金粉のほか、独自に加工した紫や赤、緑などの色漆や貝を埋め込む「沈金象嵌(ぞうがん)」を用いてます。
山岸一男は、この沈金象嵌を積極的に用いた作風が特徴的です。
沈金象嵌は明治中期、輪島で沈金の技術を応用して始まり、地元作家の間で受け継がれてきました。しかし、現在、この技法を使って作品を発表するのは、一線級の作家では全国で山岸一男のみと言われています。
沈金は、すべて点と線の彫りでつくられている為、彫りあとがそのまま仕上がりになり、失敗は許されない技法。
それだけに作品に対する緊張感と高い集中力、そこから生み出される荘厳で精緻な厳しい技のあとを感じさせます。
[出典]公益社団法人日本工芸会
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