木工 丸山浩明 蠟引楓造象嵌飾箱
木の温もりと美しい文様に魅せられます。
木工作家、「丸山浩明 ( マルヤマ ヒロアキ ) 」による指物作品です。
指物とは、板を差し合わせて作くられた家具や器具の総称。本作品は、床の間などに飾って愛でて楽しむ飾り箱です。
美しい杢目(もくめ)をもった、楓の木の白い肌を際立たせる繊細な蝋引きのなめらかさとしなやかさが魅力的です。
内箱には複雑な象嵌が繊細に施されています。
蓋の部分の楓の木がつくり出す自然の杢目。その文様が非常に美しく最大の特徴と言えます。このような自然の美しい文様のものを「玉杢(たまもく)」と言いますが、何千本に1本あるかないかの非常に珍しいものです。
この玉杢のイメージを最大限活かそうと制作されたのが本作。
水泡や、水面に石を投げたときの水紋をイメージ。
蓋の部分には蠟引きにより水の美しさを想起させる楓の白さを際立たせる表現を施しています。飾り箱自体も水の流動的なイメージを持たせ、どこからみても曲面になるような形になっています。
白と黒のコントラスト、造形の美しさが際立った形状は、杢目の美しさからイメージされたもの。
裾にみえている黒檀によるお皿の部分には水滴に見立てた螺鈿が施されています。
中は二段の重箱になっており、側面には細く切った楓をつかって水の流れる飛沫を螺鈿の象嵌で表現しています。黒は楓の白さを際立たせるために用いられていて、楠の木は染め物と同じ技法の鉄染めで黒くしています。楠の木は複雑な木目をもったものを使用。染めると斑が出る為、その斑を岩に見立て、象嵌で水が流れる情景、そして水の飛沫が舞う様を全体の意匠にしています。
どこから見ても曲面に見えるように作成されていますが、その為にはすべてのパーツが曲面になっていなければなりません。木は自然のものであり板によって変化の仕方は異なる為、その実現はとても難しい。バラバラに変化する木という材をひとつの形にまとめる為に大きな苦労と努力、こだわりを注ぎ込んでいます。細部に施された象嵌も螺鈿も含め、どれかひとつでも収まりが悪ければ成立しない複雑な造形を高い技術力と技で実現させています。
丸山浩明は、工房のある長野で自然や木と寄り添いながら、ものづくりをしています。日本工芸会準会員。
家具工房 「蒼(そう)」を主宰し、家具作りをしています。
技術的には『枘組み』や鉋などの「手工具」のしっかりした仕事を基礎にしつつ、従来の枠にとらわれない新しいデザインや面白い作品に挑戦しています。
木の性質が解かり、強度的・デザイン的にも優れている、そんな「良い物」を造り続けるのが目標。
この作品は、平成28年 第63回日本伝統工芸展において、「日本工芸会総裁賞」の受賞作です。公募された多数の作品の中からその年の最も優れた作品に与えられる最高賞です。
[出典]ギャラリージャパン
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