藤田喬平 ガラスオブジェ 「虹彩」
流れと動き、躍動、そしてその瞬間。
ガラスというマテリアルを使って表現しうる感性と美意識を最大限に体現させています。
このガラスオブジェ作品は、日本を代表するガラス作家、藤田喬平 ( ふじた きょうへい ) によるものです。
後に流動ガラスと呼ばれたこの大型のガラスオブジェは、1964年に制作されたもの。
藤田喬平が43歳の時の作品です。
動いていたガラスが、瞬間に動きを止めて最高の姿で氷結した作品。
「瀧の落ちるなかに虹の彩りが見える一瞬を表現した」と本人は語っています。
微妙な感触の微かに濁りを帯びた乳白色の複雑な造形に、青と赤、それに、小さな金箔が所々微妙に溶け込んだ妖しい輝きを発しています。
硬くて冷たいガラスに息吹を吹き込んで芸術の域に引き上げた流動ガラス。
観る側の目の中では、流動が止まった瞬間と言うより、止まっているガラスのオブジェが、必死になって流動しているように見えます。
ガラスと言う冷たいマテリアルに、みずみずしい息吹と動きを付加しています。ベースの乳白色に溶け込んだ様々な色彩がまた絶妙に融合し作品を魅力的にしています。
藤田喬平は1921年東京に生まれ、40年に東京美術学校(現東京藝術大学)工芸科に入り彫金を学びます。卒業後は岩田工芸硝子に入社しますが、間もなく独立し、ガラス作家としての道に進みます。
ガラス工芸を目指すきっかけになったのは飾箱だったようです。
多くの試行錯誤を繰り返し、日本の伝統的美意識をガラスという素材によって現代的に蘇らせたとして、その独創性に対し評価を得ます。73年に初めて発表した「飾筥」は、その翌年から藤田喬平のガラス芸術を代表するシリーズとして大々的に展開され、特に欧米において、現代の「Rimpa=琳派」としてのその格調の高い装飾美が評価を一段と高めることになりました。
世界中の人々を、「フジタのガラス」として驚嘆させました。
77年からはイタリアでの制作にも取り組み、ヴェニスのガラスの歴史と伝統を新感覚で再開発し、フジタ・スタイルの多くのヴェニス花瓶を作りだします。同じイタリアでの制作によるオブジェの大作は84年から発表されますが、それらは現代作家としての表現世界をさらに拡張する自由な造形作品となっています。
[出典]熟年の文化徒然雑記帳
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1件の返信
[…] きらめき揺れる金彩。 漆器のような艶と美しさにガラスマテリアルらしい透明感が不可思議な魅力を湛えます。 このガラスの箱物作品は、日本を代表するガラス作家、藤田喬平 ( ふじた きょうへい ) によるものです。「飾筥(かざりばこ)」と名付けられたこのシリーズは、藤田喬平を代表する作品群です。 藤田喬平が、出世作となった、「流動ガラス」を超えるものをと考え生み出したのがこの飾筥シリーズ。 […]