アルネ・ヤコブセンセブンチェア

by crafts_design · 公開済み 2020年4月5日 · 更新済み 2022年12月22日

( Arne Jacobsen Seven Chair )

ミッドセンチュリーデザインの名作。
時代や流行にとらわれない普遍のデザインです。その美しいフォルムは今もなお十分にモダンでスタイリッシュ。
デンマークの建築家・デザイナーであり巨匠と評される、「アルネ・ヤコブセン / Arne Jacobsen 」の名作、「セブンチェア / Seven Chair」です。
カフェやレストランをはじめ世界中の多くの場所で使われ、名前は知らずとも一度は目にしたことがあるのではと思われるほど、浸透している名チェアです。家具の歴史においてアイコン的存在の椅子。

世界ではじめて背座一体の三次元曲面を実現した、アントチェア（アリンコチェア）の後継として制作されたセブンチェア。アントチェアから3年後の1955年に誕生しました。座り心地や機能面の改良を加え誕生したセブンチェア。背の部分は大きく広がり、より耐久性に優れ、洗練されたフォルムを実現しました。

当時まだまだ伝統を重んじるデンマークにあって、ヤコブセンの妥協のないモノづくりへの執念と、新技術をいち早く取り入れていたフリッツハンセン社のチャレンジスピリットが、軽さと強度に優れた革新的なセブンチェアを生み出したと言えます。

セブンチェアの最大の魅力は緩やかな曲線を描く美しいフォルムと、身体を優しく包み込む座り心地。
そのカーブの形状は眺める角度によって様々な顔を覗かせてくれます。用途や置く場所に合わせて計算されたフォルムが生み出す表情を楽しむのも、セブンチェアの楽しみ方の一つと言えるかもしれません。

見た目の美しさはもちろん、座り心地も体を優しく包み込むようにつくられています。座った時に背座一体の曲線が驚くほどやわらかい座り心地を実現しています。背の適度なしなりと、座面のカーブがその座り心地を実現しており、長時間座っても疲れにくい仕様になっています。

座面は薄い9枚の積層合板で構成されており、7枚の薄板と2枚の仕上げ板の積層合板からなる構造になっています。外側を仕上げ板で挟み、3枚目を横目に使い、中央は縦目使いにし、これらの積層合板を圧着するという高度な技術で作られています。
9枚の積層合板を成形するというフリッツハンセンの高い技術力が、セブンチェアの特徴でもある美しい曲線と柔らかい座り心地、また軽さと耐久性にも優れたチェアを生み出しました。

デザイン性や軽さや耐久面における優れた機能性も、世界中で愛され続けるセブンチェアの理由の一つ。販売台数700万台以上の実績からも分かる通り、誕生から60年以上経った今でもセブンチェアの可能性は広がり続けています。
最大12脚までのスタッキングが可能。積層合板の特徴でもある軽量な仕様のため、使わない時などは簡単に積み重ねることができます。またスタッキングされた状態でも美観を損なうことがないため、そのデザイン性の高さもオフィスや公共の場で愛用される理由です。

アルネ・ヤコブセンは、デンマークの建築家、デザイナー。モダン様式の代表的な人物の一人です。
建築業績の中には、オックスフォードのセントキャサリンズ・コレッジ、マートン・コレッジでの仕事、ラディソンのロイヤルホテル、デンマーク銀行、多くの町役場、および他の建築物があります。多くの優れた椅子と他の家具を設計し、また、国際的な賞も数多く授与されています。

ヤコブセンの家具デザインの多くがモダン様式の手本になっています。1952年からのアントチェア、スワンチェアとともにラディソンホテルで設計されたエッグチェアなどがあります。
彼の最も知られた作品は1955年のセブンチェアであり、500万本以上を販売しています。セブンチェアは、1963年ルイス・モーレイの有名なクリスティーン・キーラーのヌード写真において使用されました。以降、セブンチェアは姿勢をデッサンする多くの肖像に使用されています。製造は発表当時はフリッツ・ハンセン社が手がけていましたが、現在では、複数の企業が、製造しています。
建築における理想を追求したデザイン、家具までも含めた一貫性と言う点においてミース・ファン・デル・ローエに影響を受けたと自ら語っています。