藤田喬平 箱物 手吹飾筥 花吹雪
きらめき揺れる金彩。
漆器のような艶と美しさにガラスマテリアルらしい透明感が不可思議な魅力を湛えます。
このガラスの箱物作品は、日本を代表するガラス作家、藤田喬平 ( ふじた きょうへい ) によるものです。「飾筥(かざりばこ)」と名付けられたこのシリーズは、藤田喬平を代表する作品群です。
藤田喬平が、出世作となった、「流動ガラス」を超えるものをと考え生み出したのがこの飾筥シリーズ。
「流動ガラス」と名付けられた一連の作品群は、軟らかい状態のガラスを吹竿に巻き取り、息を吹き込み球状に膨らませ、鋏等で成形する宙吹ガラスの手法で作られており、流れるガラスの一瞬を切り取ったような躍動感ある形状をしているのが特徴。
一方、この「飾筥」は、鉄の型の中に吹いたガラスを軟らかいうちに入れ、角型の作品を作ることに成功し誕生しました。これは、「尾形光琳や俵屋宗達が生きていたら、ガラスでどんなものを作ったのだろう」という発想のもと生み出されたといわれています。そのため「源氏物語」や「竹取物語」、「古都」や「花散る里」など日本の美をテーマに創作されました。
藤田喬平の作品の中でも、最も彼が得意としており、また最も評価が高い作品群です。
日本の伝統工芸である漆工で表現されてきた日本の美意識を、それまでは行われたことのなかったガラスという素材で表現しています。絵にあらわされる琳派の世界をガラスで表現したいという試みで、多数の作品群を制作しています。
各段の合口には銀で覆輪がほどこされており、胴部から蓋の全体に薄い赤と白の、カレットと呼ばれる色ガラスの粒を散りばめ、金箔を巻き、型に吹き込み成型しています。
藤田喬平の飾筥は海外では「ドリームボックス」と呼ばれています。
藤田喬平(1921-2004)は、国際的なガラス工芸の第一人者といえる作家です。
1921年東京に生まれ、40年に東京美術学校(現東京藝術大学)工芸科に入り彫金を学びます。卒業後は岩田工芸硝子に入社しますが、間もなく独立し、ガラス作家としての道に進みます。
ガラス工芸を目指すきっかけになったのは飾箱だったようです。
多くの試行錯誤を繰り返し、日本の伝統的美意識をガラスという素材によって現代的に蘇らせたとして、その独創性に対し評価を得ます。73年に初めて発表した「飾筥」は、その翌年から藤田喬平のガラス芸術を代表するシリーズとして大々的に展開され、特に欧米において、現代の「Rimpa=琳派」としてのその格調の高い装飾美が評価を一段と高めることになりました。
世界中の人々を、「フジタのガラス」として驚嘆させました。
77年からはイタリアでの制作にも取り組み、ヴェニスのガラスの歴史と伝統を新感覚で再開発し、フジタ・スタイルの多くのヴェニス花瓶を作りだします。同じイタリアでの制作によるオブジェの大作は84年から発表されますが、それらは現代作家としての表現世界をさらに拡張する自由な造形作品となっています。
[出典]近代美術工芸のオンラインショップ|アート飛田
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